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業界人のお話

第23回　神戸　孝さん

昭和3年生まれ

㈱アメリカンコンマーシャル	昭和26年設立
元取締役
㈱ミカサコーポレイション	昭和55年社名変更
	平成15年解散

　洋陶器ディナーウェア業界に輝かしい業績を残した貿易商社「株式会社アメリカンコンマーシャル」(ACI-NAGOYA)の歩みを、元取締役・神戸孝さんがまとめ記録した資料をもとに紹介しています。

アメリカンコンマーシャル
（ミカサコーポレイション）の始まり

―――・・・American Commercial Inc.(USA)George T.Aratani社長とMr.Shig. Kariya来名

　戦後民間貿易再開になると、米国Los Angelesの貿易会社American Commercial Inc.社長George T.ArataniとShig. Kariya両氏が当地から洋陶器を買い付け、米国で販売しようと、水野栄次氏（貿易会社UCGC(JAPAN)社長）を頼って来名された時から始まる。

（ACI-USA Shig. Kariya氏と水野栄次氏とは従兄弟同士）

Mr.George T.Aratani

Mr.Shig. Kariya

―――・・・株式会社アメリカンコンマーシャルの設立

最初は、水野栄次氏が個人で、全星商会（Cable Addres ZENSEI NAGOYA)を設立し、UCGC社員の波多野正暢氏に業務を兼務させ、ACI-USAとのビジネスを行っていたが、昭和24年(1949）Mr.Al.FnabashiがACI-USAに入り、日本からの洋陶器の買い付けと米国国内の販売をG.T.Aratani社長から一任されるようになると、ビジネスが活発になり、ACI-USAからの注文も多くなり、輸出業務も増えてきたので、水野栄次氏は昭和25年(1950）に市内東区前野町のユニオン商会（伊藤輝元社長）内に会社事務所を借り、合資会社アメリカンコンマーシャルを設立、田代商店時代の同僚の加藤義雄氏を迎え、波多野正暢氏と2人で業務を行っていた。　昭和26年（1951）12月26日、東区赤塚町1-18（交差点南西角）に事務所を借り、American Commercial Inc. Losの日本代理店、株式会社アメリカンコンマーシャル（資本金80万円）が設立された。			Mr.Al.Funabashi
			加藤義雄

　この株式会社の出資者は、加藤義雄、波多野正暢、木村義雄以外は、水野栄次氏をはじめ殆どがUCGC（JAPAN)の役員達で、UCGC(JAPAN)の子会社のような関係でもあった。会社設立当時のスタッフは、代表取締役加藤義雄以下、波多野正暢、木村義雄、高丘升の男子社員、磯部、内山女子社員の６名であった。


[昭和27年4月　東区赤塚町　事務所前にて ]

　　
　昭和29年（1954)ACI-NAGOYAは洋陶器の輸出以外に、㈱アメリカンコマーシャル（本社東京）から中部地区での米国製医療機器の販売委託を引き受けることとなった。

―――・・・新社屋（東区新出来町）に移転
　昭和30年（1955）11月、東区赤塚町の借り事務所が狭くなってきたので、東区新出来町1丁目に木造2階建ての事務所と倉庫を新築、移転することとなった。当時のメンバーは加藤社長をはじめ波多野、木村、高岳、神戸の男子、大岩、三輪の女子、総員7名であった。


	[昭和30年11月　東区新出来町　新社屋前にて ]

　その後、加藤（維）、浅山、片桐、三浦の男子、坪井、伊藤の女子事務員と医療機器関係に苅谷が入社し１５名となった。
　当時の取引メーカーは、鳴海製陶、名古屋製陶所、比良陶器、瀬栄陶器、名古屋商会（現桃山興産）、山口陶器、美濃輸出、大和陶器、マルト製陶、角庄等の洋陶器メーカーで、すべて白磁器に上絵付けされたディナーセットで、なかでも比良陶器のディナーセットは、価額も安かったので注文も多く大量に輸出された。
　ACI-NAGOYAが年々輸出実績を伸ばし、洋陶器ディナーウェア取り扱い専門商社に成長してきたので、昭和31年（1956)9月UCGC(JAPAN)関係の株主や役員達がACI-NAGOYAから手を引く事になり、新たな株主と役員が決まり、この時、荒谷哲夫氏（GTA)がUCGC(JAPAN)役員達が所有していた株式の過半数を引き受け、取締役にも就任し、ACI-NAGOYAの経営にも参加することになった。

日系二世
Mr.George T.Aratani　と　Mr.Al.Funabashi

―――・・・George T. Aratani社長の経営精神
　George T. Aratani社長(*)は各メーカーとの相互信頼関係の構築に力を注ぎ、共存共栄の精神を最重要視し各メーカーと接していた。また、George T. Aratani社長は戦前、日本の言葉と文化を学ぶため来日し、慶応大学に3年間在籍し勉学したこともあり、読み書きは勿論のこと、日本の言葉を話すこと、聞くこと、理解力もあり、相互の意思疎通を欠くこともなく、各メーカーと接していたので絶大な信頼があった。

（*)　George T. Arataniは

昭和63年春　　勲4等瑞宝章を受賞
平成20年春　　旭日重光章を受賞

―――・・・Mr.Al.Funabashiの開発力
　Mr.Al.Funabashiは商品の開発力、市場で求められている商品を見抜く洞察力と優れた判断力の持ち主で、従来の12人前揃93ピースディナーセットの観念を打ち破り、独自の発想で、新しいアイテム12”Chop Plate､9”Salad Bowl(Platter、Casseroleに代えて)と予備の碗皿4セットを組み入れる等の実用的な新しい構成の12人前揃「98ピースセット」を発売し、従来の93ピースセットを98ピースディナーセットの市場に変えさせてしまった。
　そのうえ、若い消費者たちにも購入しやすいように、8人前揃の45ピースセット、更にこのセットをショート化した4人前揃の20ピースセット（これらのセットが現在の主流構成セットになっている）、アメリカ人の新しいライフスタイルに適したカジュアルウェアを次々と登場させ、全米各地で宣伝、販売し好評を得、従来のディナーウェアの観念を大きく変えさせていき、販路を拡大し、販売の実績を伸ばし、ACI-USAを米国洋陶器ディナーウェアの専門大手販売会社に成長させていった。このお陰でACI-NAGOYAは、ACI-USA の業績拡大に伴い年々輸出実績を伸ばし、会社の業績も順調に伸び洋陶器ディナーウェア専門大手輸出商社に成長した。

「MIKASA」ブランドの誕生と発展

―――・・・世界で「MIKASA」を商標登録

　昭和32年（1957）12月、George T. Aratani社長はノリタケ、ソニー同様に、企業、商品のイメージを高めるため、「ＭＩＫＡＳＡ」ブランドを誕生させ、米国・日本を始めとして世界の主だった国々に「ＭＩＫＡＳＡ」の商標を登録した。そして、ACI-USA の取り扱い高品質の高級ディナーウェアに「ＭＩＫＡＳＡ」ブランドを付け輸出されることとなった。　

[MIKASA]のロゴ

―――・・・カナダ市場でも販売
　この頃、カナダ、モントリオールImport & Domestic Trading社Kaz.西尾社長からACI-USA に「ＭＩＫＡＳＡ」ブランド商品をカナダ市場でも販売したいとの申し入れがあり、ACI-USA の指示でカナダI.D.T.社との間に代理店契約が結ばれ、名古屋からカナダにも「ＭＩＫＡＳＡ」ブランドのディナーウェアが輸出され、カナダ市場でも販売されることになった。 I. D.T.　Kaz.西尾社長は、カナダ二世で日本語も大変流暢で毎年春・秋の2回、Funabashi氏に合わせて来名、Funabashi氏と一緒に新商品開発に協力し、「ＭＩＫＡＳＡ」発展に多大な貢献をしてくれた。

―――・・・ACI-US(MIKASA)と宮尾陶器硬質ディナーウェアの商談成立
　宮尾陶器（四日市市）は、昭和35年(1960)までは、ノベルティア製品を米国U.C.G.C.社、LEFTON社等の商社に大量に輸出していたが、昭和36年（1961）に入り生産性の低いノベルティからディナーウェアに転換を図り、市内羽津町に新工場を建設し、ディナーウェアを生産し輸出しようと、昭和36年1月先ず最初に取引先のニューオリンズのU.C.G.C.社（当時洋陶器輸入第1位の商社）ストラロフ社長に宮嶋芳平会長、宮嶋邦彦社長両氏が新商品ディナーウェア取引の商談をするが、ストラロフ社長から良い返事がもらえないので、他の商社と商談することの了解をストラロフ社長から取り、宮嶋会長、宮嶋社長両氏はACI-USA（当時洋陶器輸入第2位の商社）に当たることにした。
　宮嶋会長、宮嶋社長両氏はACI-USA社のMr.Al.Funabashiに会い、宮尾陶器の現状や将来の計画等を説明し、持参した見本、スケッチなど見せ色々相談、話し合った結果、Mr.Al.Funabashiから「オーケー、私にまかせとけ」という心強い返事をもらうと共に、私が訪日する3月迄に見本等の準備をしておくように言われた。
　当年（1961)3月ACI-USA社のG.T.Aratani会長とAl.Funabashi両氏が宮尾陶器に来社し、準備されていた見本等を見て、この新製品硬質陶器ディナーセットの米国市場での販売は絶対に成功すると確信をもち、初取引にもかかわらず6,000セットの注文を宮尾陶器に出した。
　これにより宮尾は、羽津工場、三ヶ谷工場で本格的な硬質陶器ディナーセットの生産を開始した。

―――・・・硬質陶器「CERASTONE」・「TERASTONE」米国市場にデビュー
　昭和37年（1962）3月、MIKASAと宮尾陶器との共同企画による硬質陶器ディナーウェアの生産も軌道に乗り、商品名「CERASTONE」、「TERASTONE」という62ピース構成の新しい硬質陶器のディナーウェアが完成し、米国・カナダ市場にデビュー広告宣伝、販売されることになった。当時主流のディナーセットは8人前揃の45ピースセットであったが、この新セットは、従来45ピースセットにCoffee Pot､C’d Butter､Salt&Pepper、Gravy Boat W/S等の日常使われるアイテムが加えられた。この8人揃のセットを買えば日常食器が全部揃う、とアメリカの家庭で好評となり、そのうえ電子レンジ、食器洗い器にも使用でき、さらに値段が小売価額１セット30ドルという安価であったことが魅力的で、当時の米国中流家庭のカジュアル志向にマッチした食器として爆発的に売れた。


「CERASTONE」ライン」

「TERASTONE」ライン (VANILA(1971))」

　宮尾陶器の「CERASTONE」、「TERASTONE」62ピースディナーセットが米国・カナダ市場で販売以来爆発的な売れ行きを示し、ベストセラー商品として販売好調を維持した要因は、この商品が米国中流家庭のカジュアル志向にマッチした目新しい商品で、価額も安価であった事も勿論であったが、ちょうど高度成長期で、物の使い捨て消費経済の時代で、購買者は絶えず目新しい物を求めていたし、購買者がカラー感覚に敏感になっており、家庭用品にもカラーコーディネートする意識を身につけ、夫々がカラーの選択をするようになっていた。

―――・・・宮尾陶器の基本方針「人間と人間の信頼こそ、商売の基本である」
　宮尾陶器の宮嶋芳平会長は「人間と人間の信頼こそ、商売の基本である」と云う信念に基づき、輸出はMIKASA(ACI)一社の方針を決めていた。宮尾陶器はMIKASA-USAと発展、共存して行く為には、常に宮尾陶器の商品に魅力をもたせ、顧客の満足する商品を創るしかないと、積極的にMIKASAと一緒に商品開発に取り組み商品を開発し、年2回春と秋に米国市場に目新しい商品を登場させ、販売を成功に収め、MIKASA-USA、ACI-NAGOYAと宮尾陶器3社とも会社業績を伸ばしていった。

　このようにして、MIKASA-USA、ACI-NAGOYAと宮尾陶器3社の間には固い絆が結ばれ、長年に渡り密接な関係が築かれ、各社夫々業績を伸ばし、宮尾陶器は大手洋陶器ディナーメーカーに成長し、MIKASA-USAは米国洋陶器輸入販売１位の商社に、ACI-NAGOYAも大手洋陶器輸出商社となった。

―――・・・ACI-NAGOYA　責任者・代表取締役加藤義雄死去ー新役員が決まる
　昭和38年（1963）5月16日、ACI-NAGOYAの責任者・代表取締役加藤義雄が病のため死去、中区大須の西本願寺に於いて社葬にて葬儀が執り行われた。そして、昭和38年６月１１日次のとおり役員が決まった。

	代表取締役　会長	荒谷　哲夫（Mr.George　T.Aratani）
	代表取締役	波多野　正暢
	取締役	木村　義雄　　・　　神戸　孝
	監査役	天野　金三郎

　荒谷哲夫氏（Mr.George T.Aratani）がACI-NAGOYAの代表取締役に就任したので、ACI-NAGOYAはMIKASA-USAの名古屋支店のような関係になった。

―――・・・東区橦木町に自社ビルを新築移転
　宮尾陶器の「CERASTONE」「TERASTONE」のカジュアル　ディナーセットの販売は絶好調を維持し、他の磁器ディナーセットの販売も順調であったので、MIKASA-USAは大幅に業績を伸ばし、全米1位の洋陶器ディナーウェア専門販売会社に成長した。お陰でACI-NAGOYAも輸出実績を伸ばし会社の業績を大幅に伸ばす事ができ、洋陶器の大手専門輸出商社になった。
　宮尾陶器の「CERASTONE」「TERASTONE」の大量注文を始めとして、他社メーカーへの注文も相変わらず順調で、さらに銀行景品の大量注文を受け、業務も非常に多くなり、増員が必要になってきた。
　その為東区新出来町の事務所は手狭になり、昭和39年（1964）5月、東区橦木町3-46に鹿島建設にて鉄筋２階建てﾋﾞﾙの社屋と倉庫を新築、移転することとなった。昭和41年（1966）社屋を１階増築し3階建てになる。)


	[㈱アメリカンコンマーシャル（㈱ミカサコーポレイション）社屋]

　　
―――・・・鳴海製陶ボーンチャイナを開発、米国市場にデビュー
　昭和40年（1965）、MIKASA-USA取引主力メーカー鳴海製陶は洋陶器の最高級品ボーンチャイナ・ディナーウェアを開発し、米国市場にデビュー販売されることになった。この「ＭＩＫＡＳＡ」ブランド、ボーンチャイナ・ディナーウェアの米国市場デビューによってMIKASA-USA は洋陶器の最高級品ボーンチャイナ製品から高級磁器製品・硬質陶器製品など幅広い商品群を持つことになり、米国の洋陶器ディナーウェア専門大手販売会社MIKASA-USAの地位を更に一段と高めることになった。

―――・・・「MIKASA」市場の拡大
　この頃、カナダI.D.T.社同様、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの下記商社が、「MIKASA」の傘下に入り、ACI-NAGOYAと代理店契約を結び、「MIKASA」ブランド商品が夫々の国にも輸出され、市場で販売される事になった。

オーストラリア	JAC	（メルボルン）
ニュージーランド	G＆R	（オークランド）
南アフリカ	BMD	（ヨハネスブルグ）

　昭和42年（1967）宮尾陶器の売上高は、昭和37年（1962）の輸出当初に比べ約5倍にも伸び、大手ディナーウェアメーカーの地位を築いた。また、MIKASA-USAは勿論の事、ACI-NAGOYAもお陰で飛躍的に業績を伸ばす事が出来た。
　同年、国内医療機器販売会社・東京アムコ本社が名古屋支店を開設することになり、ACI-NAGOYAは医療機器部門を閉鎖することになった。この時、医療機器販売部長・苅谷喜久雄は、ACI-NAGOYAに残り取締役に就任する。　　
　MIKASA-USAは、Los Angeles,San Francisco等の米国西地域の販売を強化するために、カナダI.D.T.社のセールマンのMr.Alfred J.BlakeをMIKASA-USAにスカウトした。

　

米国Ｊ&R社からの
景品用商品の大量注文は
中部陶磁器産業界に活気をもたらした

―――・・・米国J&Hからの景品用ディナーウェアの大量注文
　昭和43年（1968）米国J＆H社から景品用磁器製ディナーウェア　OPEN　STOCKの大量注文が入った。この注文は米国の国内ガソリンスタンドで使われる景品用ディナーウェアのOPEN　STOCK（単品商品）で、2シェープ、２パターン（501 CLASSIC 502 ELEGNCE）があり、夫々のアイテムと数量が非常に多く、その上毎月J＆H社からの指示通りにアイテムと数量を船積しなければならず、何十軒かのメーカーに手分けして造ってもらわないと対処出来ない程の大量注文であった。
　この商品は景品の為値段が安く、大手ディナーメーカーでは注文を引き受けてもらえず、名古屋市内、瀬戸、美濃の中規模の素地、絵付メーカーに手分けして注文を手配した。このJ＆Hからの大量景品注文は、昭和46年（1971）8月のニクソンショックまでの約3年近く続き、当時一大J＆Hブームをつくり、中部陶磁器産業界にも活気をもたらした。お陰でACI-NAGOYAはこの景品ビジネスによっても会社の業績を更に大きく伸ばすことが出来た。そして従業員も創業以来50人の大世帯になった。

[昭和45年12月末㈱アメリカンコンマーシャル（㈱ミカサコーポレイション）正面玄関前にて]

―――・・・ニクソンショックにより注文キャンセル
　我が国の対米輸出は、大変好調を維持してきたが、昭和46年8月15日に突如としてドル防衛のため、ニクソン大統領が大幅な輸入制限策を打ち出し、輸入品に課徴金10％を課すという強硬な声明を出した。いわゆるニクソンショックである。日本は全輸出高の30％以上対米輸出に依存しているだけに、日本経済の屋台骨を揺るがす程の大ショックとなった。
　MIKASA－USAもこの輸入制限策と課徴金10％により、日本からの商品の輸入を一時減らさなければならなくなり、各メーカーと話し合い、取り敢えず一時減産の協力を受諾してもらうことになったが、J＆H社はニクソン大統領の発令に伴い、ACI-NAGOYAに対し、発注した商品すべての注文キャンセル通知があり、この注文キャンセルで会社は大打撃を受けた。
　Ｊ&Ｈ社の大量の景品ビジネスは大変華やかで一時業績も向上したが、全商品キャンセル問題で、終末は大量の不良在庫商品（当時として約4,000万円）の処分問題等で大変苦労すると共に、多額の損害を受けた。

対米輸出問題
輸入関税引上げ・変動為替相場
石油ショック

―――・・・対米輸出問題により減産依頼
　対米輸出問題に付いては、昭和46年（1971）12月18日、１ドルが360円―308円に切り上げられ、更に昭和47年（1972）4月には、陶磁器の輸入制限処置として、大幅な輸入関税の引き上げ処置が取られた。
　その上、昭和48年（1973）2月から円は308円の固定相場から変動相場制に移行され、円相場は世界為替市場の状況により時々刻々変化することになり、輸出入業者にとっては、その変化が直接商売に影響することになった。
　更に悪い事に、昭和48年10月の石油ショックにより物価が上昇し、又世界的なインフレによる大不況を引き起こし、特に米国の不況は大きく、景気後退で商品の販売にも大きな影響を受け、MIKASA-USAの在庫品も大量に増えた。
　その為、MIKASA-USAは、取引各メーカーに一時商品発注の減少に協力の要請をしてきた。MIKASA-USAの最大取引メーカー宮尾陶器には、30％の減産依頼があり、宮尾陶器は一時人員整理などして減産に協力する事になった。

―――・・・国内販売㈱ミカサの設立
　ACI-NAGOYAと宮尾陶器の両社は、大幅な輸出減少に伴い将来を考慮し、輸出一辺倒の方針から国内にも販路を持とうと合意し、昭和48年（1973）8月に両社合弁の国内販売会社　株式会社ミカサを宮尾陶器㈱本社内（四日市市羽津中3丁目）に設立することになり、ACI-NAGOYAからは、荒谷会長、Aｌ.Funabashi、神戸孝、酒井孝之、山中宣幸が新会社㈱ミカサに参加することになった。この国内販売社㈱ミカサはMIKASA-USAと同様に国内のデパートを対象に商品の販売方針を立て、宮尾陶器製品のミカサブランド商品を宣伝販売することになった。

―――・・・MIKASA-USA(ACI)功労者Al.Funabashi社長の死去-後任社長にAlfred J.Blake氏就任
　昭和53年（1976)6月3日、MIKASA-USA(ACI)の功労者Al.Funabashi社長が持病の心臓病で急逝し、後任にはMr. Alfred J.Blakeが38歳の若さで社長に就任した
　亡きAl.Funabashi社長については、昭和26年（1951)から昭和51年（1976）までの25年の間、George T.Aratani会長とコンビで毎年春、秋の2回、新商品仕入れに来名し、当地洋陶器ディナーメーカーと一緒にデザイン、シェープ等目新しい商品を開発、注文して帰国し、1月と6月の年2回新商品を米国市場に発表販売し、年々販売実績を伸ばしMIKASA-USAを大手洋陶器販売会社にさせた。
　更に昭和37年（1962)、宮尾陶器と共同企画の硬質陶器カジュアルスタイルのディナーセットを市場に登場させると大好評で爆発的なヒットとなり、長期的なベストセラー商品となり、宮尾陶器をディナーウェア専業メーカーに成長させると共にMIKASA-USAは、このヒット商品により大幅に業績を伸ばし米国第1位の洋陶器販売会社にさせた功績は大きい。
　Alfred J.Blake社長に就いては、生前Al. Funabashi氏が彼の優れた才能を認め自分の後継者として一緒に仕事をし育成していたから、MIKASA-USAの取引先からも何ら不安を抱く事はなかった。

53年間続けてきた貿易商社の
幕を降ろすことになった

―――・・・代表取締役会長荒谷哲夫が㈱ミカサコーポレイションの株式を譲渡し退任
　　平成4年（1992）代表取締役会長荒谷哲夫が㈱ミカサコーポレイションの株式全部（荒谷哲夫名義）と会社の経営権をUSA　Mikasa　Inc.(Alfred J.Blake社長)に譲渡し退任したので、㈱ミカサコーポレイションはUSA　Mikasa　Inc.の完全な子会社になり、約30年近く続いてきた荒谷哲夫会長の会社経営からUSA　Mikasa　Inc. Alfred J.Blake社長の経営方針に従い運営されてきた。さらに、平成12年（2000）末、USA　Mikasa　Inc.はフランスのJ.G.Durand社に経営参加を求め、Durand社がUSA　Mikasa　Inc.の株式84.5％取得する事になり、USA　Mikasa　Inc.、MIKASA-NAGOYA両社ともDurand社の経営方針に従うことになった。

―――・・・東南アジア諸国に生産拠点を移す
　　昭和55年(1980)頃から、国内の大手輸出企業メーカーは、急激な円高問題、国内での原材料費、燃料費、人件費の高騰等により企業の存続、発展の為に生産拠点を海外に移すようになってきた。労働集約型の陶磁器メーカーも労働者の確保が容易で、人件費の安い、東南アジア諸国に生産拠点を移すようになり、USA　Mikasa　Inc.の大手取引メーカーの鳴海製陶はインドネシアに、宮尾陶器は昭和63年（1988）にマレーシアに生産拠点を移し、現地で生産しアメリカ、カナダ、オーストラリア等海外に直接商品を輸出するようになった。又当地の多くの中小企業輸出向け陶磁器メーカーも経営困難のため工場閉鎖、廃業や転業し、中部地区の陶磁器業界は空洞化状態になってしまった。
　　このような状況下では、㈱ミカサコーポレイション(MIKASA-NAGOYA）の存在価値が無くなってきたのでUSA　Mikasa　Inc.本社の指示により、平成15年（2003）12月末日をもって解散閉鎖される事となり、昭和26年（1951）から53年間続けてきた貿易商社の幕を降ろすことになった。

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