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九谷焼のこの製品には、妙に気がそそられる。中央で三味線を持っている着物の芸者は、いったい何をながめているのだろうか。その構図のおもしろさもさることながら、かなり細かく正確な絵付けが施されており、絵付け職人の技術の高さをうかがわせる。
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男女のロマンスを描いた模様は転写による絵付けで、そのものずばり「ロマンス転写」と通称されている。カップのこう台、ラスター彩、エメラルドグリーンの上絵、金の縁どりがエレガントな雰囲気を醸し出している。名古屋で絵付けされた製品の中でも、高級品の部類に入る。
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この製品には、とくに高く盛る台白(だいしろ)という絵の具と、平盛りの絵の具である三番白(さんばんしろ)によって、塔・山・木などが立体的に描かれている。(こうした技法を二重盛りという)さらに、木の葉の部分には、細かいガラスが振りかけられており、光の角度によってキラキラと輝く。おもしろいのは、塔の屋根の青色や山の茶色は、焼成による発色ではなく、水彩絵の具で彩色されている点だ。
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なんとも不思議な気持ちにさせるデザインだが、開発者の話によると、ぼんやりと柵を眺めているときに、思いついた絵柄だという。竹が交差している部分が、柵からヒントを得たところなのだろう。背景のピンク色が、妙になまめかしい。一時期、ヨーロッパへ大量に輸出された。
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まっ赤なベースに、影絵のような黒い鳥と花が描かれているが、どこか懐かしい印象がある。まず赤を全面に吹いて焼成してから、黒で鳥と花が描かれている。現代なら転写で簡単にできてしまうのだろうが、絵付け技法の違いによって、製品の深みはずいぶんと違ってくるのがわかる。
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中央の女性は弁天様。葉盛り、紺盛りなど盛り絵の具が多用されて立体的に見せようという情熱が感じられるが、そのデザインは現在の日本人の感覚からすると、奇異に映る面もある。この製品も、使う食器というよりは、むしろ飾るためのもので、アメリカ、ヨーロッパへ大量に輸出された。
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淡いクリ−ム色の上に、めずらしい蝶の模様が版と手描きによって描かれているこの製品は、主にヨーロッパへ輸出された。幾何学的に蝶が配置されている感覚は、ヨーロッパ的であり、デザインはバイヤーの指定によるものだろう。昭和40年頃の製品。
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黒や黄色を絵付けしてから、金盛りの縁取りがカップの内側に施されている。カップの内側への絵付けは、高い技術が必要だが、とくにこの製品は金縁取りの細かさに感心させられる。こう台の部分でくびれた形状には、アンティークな雰囲気が漂っている。(MADE
IN OCCUPIED JAPAN 製品)
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