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名古屋陶業の歴史


陶磁器会館に寄せた業界の思い

 名古屋陶磁器会館を建設した「名古屋陶磁器貿易商工同業組合」は明治42年に設立されています。同業組合には大手・中小の絵付加工業・貿易商などたくさんの業者が参加していました。
 昭和7年に建設された名古屋陶磁器会館の建設費用は総額6万円余で、そのうち約75%に当たる4万4942円は同業組合組合員の寄付金でまかなわれ、残りは組合費の中から積み立てられた積立金を充当しました。ここでおもしろいのは、組合員の寄付金のうち推定3万円余がハシケ賃のリベートだったという点です。昭和初年は海運・港運業界にとって競争激化期で、リベートを払ってでも貨物を獲得したいと動きがあったことが、その背景にあります。ただし、リベートが懐に入ってくるのは直輸出業者であって、輸出業務に関わりのない中小問屋や画工場には直接関係ない話です。
 当時の名古屋陶磁器会館建設の寄附帳を見ると、2000円、1000円という高額な寄付金を出している直出業者や大手の加工完成業に混じって、20円、10円、5円といった少額の寄付をしている画工場などがたくさんあります。彼らは、「リベートをもらっている大手のようにたくさんは出せないが、たとえ少額でも寄付したい」という気持ちからお金を出し合ったのです。
 名古屋陶磁器会館の建設は、そうしたたくさんの人たちの業界に少しでも貢献したいという熱い思いがあってこそ実現したといっていいでしょう。